「京都外国語大学大学院・理論&実践英語指導法シリーズ」の意義

  • 山本 玲子(京都外国語大学 キャリア英語科 准教授 博士(言語文化学)
  • 安木 真一(京都外国語大学 キャリア英語科 教授)
  • 杉本 義美(京都外国語大学 英米語学科 教授)
  • 鈴木 寿一(京都教育大学 名誉教授/京都外国語大学大学院 非常勤講師) 

 

現在、英語教育が大きく変わろうとしている時代です。この時代状況を踏まえて、このDVDシリーズの意義についてお聞かせください

 

 

山本:小学校英語は教材や活動などは色々なところで紹介されているんですけれども、小中高つなげて、しかも理論的な裏付けを紹介しながらのこういったビデオというものはおそらく例がないという風に思っています。

 

 小学校英語を教科化にすると、それ以降の免許をとる学生さんにとっては小学校英語教育法が必修になりますけれども、それ以前の先生方にとって、専門知識を得る機会がなかった先生方にとって、それを自信を持ってやっていただくためのひとつの助けになるというふうに思います。

 

既にこのDVDが発売されてから大学で小学校課程、あるいは中高の英語教育法の授業の中で、小学校英語を知るための手段としてこのDVDを授業で使ってくださっているという声もたくさんいただいています。そういう大学で学べる学生さんはいいんですけど、それ以外の先生方が、同じような知識を自信を持って得ていただけるということでも、このシリーズ、小学校英語においては、そういった意味での意義があると思っています。

 

 

安木:私自身、この大学にかつて学びました。その際に思ったのは、「実践と理論が非常にバランスが取れた教育が行われている」ということで、私が現職の高等学校の教員としてそこで学んだ「理論に基づいた実践」というのが私自身の中で有益でしたので、ぜひここで教えられていることを広めたいとかねてより思っていました。

 

今回このDVDシリーズを企画させていただくチャンスをジャパンライムさんより得て、DVDを作ってきたわけです。

 

今、教育現場では様々な指導法が出て来ていますが、私はやはり、きっちり理論に基づいて、こうしたら生徒が伸びるんだということを見ながら、生徒の将来を見据えて、一つ一つの指導をパーツとして組み合わせながら、どんな人でも実践できるような指導法を作っていく、というのが我々の大学院の役目だと、今、こちらで職務について思っています。

 

様々な現場で様々な先生方がどう指導したらいいんだ、明日はどうするんだ、ということを悩んでおられると思いますが、かつての私がそうであったように、ここで教えられるような理論とそして実践を学ぶことで、必ず先生方の授業は変わっていくんじゃないかと思います。

私自身は音読を核としていますが様々な指導法を取り入れていますし、先生方もぜひここでDVDを見ていいただいて、ご自身の授業改善にお役立ていただけると思います。

必ず授業は良くなっていくと確信しています。

 

 

杉本:このシリーズは京都外国語大学の大学院生、および大学院担当の教員がベースとなってつくったわけですが、その中で一番基本となるのは言語の認知、生成認知メカニズムに基づいて、しかもかつそれ以外の全ての部分で理論的な裏付けを基にした指導法の提案がなされているということです。

 

 よくノウハウ的なものは各研究会とか書籍等で紹介されていますが、ノウハウの裏にある、バックグラウンドとなる理論的な裏付けというのは意外と知られていない、と。

だからこそ現場の先生方は、そのノウハウを取り入れて授業をされますが、なかなかうまくいかない。

それはやっぱりその根本となる理論をしっかりと学ばれていないことが多いんです。でも本大学院では語彙指導、ラウンド制、PI、TPR、音読指導、統合的な指導、またアウトプットに至る指導、こういったものすべてにわたって理論的なことを基盤としてどういう指導をしていくのか、というのを考えていける場です。

 

その成果として今回のDVDの発刊に漕ぎ着けました。ぜひそういう意味で、このDVDを通じて裏側にある理論を認識していただいて、その上に立って授業を実践されることを期待しています。そのためにもこのDVDをじっくりと見ていただければ、お役に立てることとなっていると思います。是非しっかりと見ていただければありがたいです。

 

 

鈴木:2020年度より実施される次期学習指導要領では3つの柱が建てられています。

ひとつは知識技能、もう一つは思考力・判断力・表現力など、三つ目が学びに向かう力・人間性。こういったことが挙げられています。

この3つの柱ををしっかりとしたものにするためには、先生方の適切な指導が不可欠です。

 

ところが現状を見ますと、免許更新講習会ですとか私が担当します色々な研修会で、英語診断自己診断テストというものを、一部を使って先生方に回答していただいてるんですが、その回答結果を見ますと不適切な指導が非常に多いんですね。適切な指導がなされていない、やってはいけない指導がなされているということが非常に目立ちます。

それでは学習者の学習意欲は低下しますし、当然学習者が授業外で努力する、つまり家庭学習の時間が減少します。そうしますと英語力が低下する、こういう悪循環を引き起こしてしまうわけです。

ですから、適切な指導がいかに大切か。

そしてその適切な指導法とは、具体的にあげますと今回紹介したような指導法です。

今回紹介した指導法は、攻守、あるいは生徒の学力レベル、教師の経験年数、そいういったことに関係なく、ある一定の手順をふめば必ず成果があがる、そういった性格のものです。

 

ですから、ぜひこれまでの理論研究、実践研究で改良されてきましたこの指導法シリーズのDVDを活用していただいて、長い目で見て生徒のためになる英語教育、英語授業を展開していただければと思います。