英語教育のおかれている現状と改革に向けた背景

 

 ●英語力の重要性

グローバル化が急速に進展する中で、異文化理解や異文化コミュニケーション、つまり外国語によるコミュニケーション能力の向上は、極めて重要な課題となってきています。

 

今の子どもたちは2020年の東京オリンピック・パラリンピックはもとより、これから10~20年後の日本において、多文化、多言語、多民族の人たちが協調、競争する国際化した環境の中で生きていくことが予想されます。

そのような環境下で、今後は外国語を用いたコミュニケーションを行う機会が格段に増えていくことでしょう。

 

 

  現行の学習指導要領では、外国語を通じて「言語や文化に対する理解を深め、積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度」を養うこと、「情報や考えなどを理解したり伝えたりする育成」を目標として掲げ「聞くこと」「読むこと」「話すこと」「書くこと」などを総合的に育成することをねらいとして改訂され、様々な取り組みがなされてきました。


現行指導要領の概要

 ・小中高校を通じてコミュニケーション能力を育成する

 ・言語や文化に対する理解を深めていく

 ・積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度を育成する

 ・4技能をバランスよく育成する

 ・指導語彙の充実を図っていく


上記のような概要のもと、各校種での要旨は下記の通り。 

 

小学校

(平成20年改訂~23年実施)

  • 平成23年より56年生において外国語活動を週1コマ導入
  • 外国語を用いて積極的コミュニケーションを図ろうとする態度の育成が中心
  • 学級担任又は外国語担当教員(ALT他)による実施

中学校

(平成20年改訂~24年実施)

  • 授業時数を週3コマから4コマへ充実
  • 「聞く」「話す」を重視した指導から4技能のバランスが取れた指導への改善
  • 指導語彙数900語⇒1,200語へ充実 

高等学校

(平成21年改訂~25年より年次進行)

  • 履修及び科目構成の変更
  • 英語の授業は英語で行うことを基本とする(生徒が英語に触れる機会を多くし、コミュニケーション場面を設定)
  • 指導語彙1,300語⇒1,800語へ充実

 

生徒の発達の段階や興味・関心に応じて言語の使用場面を適宜取り上げ、聞く、話す、読む、書くの4つの技能を総合的に育成することができる言語活動となるよう、言語の使用場面とそれに応じた言語の働きを言語材料と関連させながら組み合わせて扱う…ということが記載されています。


これまでの成果と課題を踏まえて、次期学習指導要領が2020年度より実施されます。 

 

 

小学校の外国語教育における改善

 

◎中学年から「聞くこと」「話すこと」を中心とした外国語活動を通じて外国語に慣れ親しみ、外国語学習への動機づけを高めたうえで、高学年から発達段階に応じて段階的に「読むこと」「書くこと」を加え、総合的・系統的に扱う学習を求められ、これまでの課題に対応していくため、新たに

  • アルファベットの文字や単語などの認識
  • 国語と英語の音声の違いやそれぞれの特徴への気づき
  • 語順の違いなど文構造への気づき

など、言語能力向上の観点から言葉の仕組みの理解などを促す指導を教科として行うために必要な時数を確保する。

 

◎このような方向性をめざし、小学校高学年において「聞くこと」「話すこと」の活動に加え「読むこと」「書くこと」を含めた言語活動を展開し、定着を図り、教科として系統的な指導を行うために、年間70単位時間程度の時数が必要。また中学年における外国語活動については、従来の外国語活動同様年間35単位時間程度の時数が必要である。

 

中学校の外国語教育における改善

 

◎小学校で学んだ語彙や表現などの学習内容等を中学校の言語活動において具体的な課題を設定するなどして、意味のある文脈の中でのコミュニケーションを通して繰り返し触れ、生徒が必要な語彙や表現などを活用することができるようにする。様々な工夫をして言語活動の実質化を図り、生徒の言語運用能力を高めることが必要。

 

◎中学校では、生徒にとって身近なコミュニケーションの場面を設定したうえで、学習した語彙や表現を実際に活用する活動を充実させ、高校との接続の観点から外国語で授業を行うことを基本とするなど指導の改善を図っていく。

 

◎その他、全国学力・学習状況調査の実施

 

高等学校における科目構成の見直し

 

◎高等学校卒業段階で求められる「外国語を通じて、情報や考えなどを的確に理解したり適切に伝えたりすることができる力」(CEFRのA2~B1レベル相当を想定)を育成するため、五つの領域を総合的に扱う科目として「英語コミュニケーション」を設定する。

 

◎高校生の多様性を踏まえ、外国語で授業を行うことを基本とすることが可能な科目の見直す必要。また、必履修科目において、中学校の学び直しの要素を入れることとする。

 

◎いかに言語活動を改善・充実していくかといった観点から科目の見直しを行う。このため五つの領域の総合型の科目として「論理・表現」を設定する。その他、学校設定科目の対応なども考えていく。

 


以上のことからも外国語(英語)を用いたコミュニケーション力を向上させていくためには、「聞くこと」「話すこと」だけに限らず「読むこと」「書くこと」を含めた4技能をまんべんなく高めていく活動を授業の中で取り入れ、実践していくことが求められており、それぞれの技能を効果的に結びつけた活動なども重要であると考えられています。

 

ジャパンライムでは、4技能を効果的に高めていくために先駆的に取り組まれてきた様々な活動例、実践例の数々を映像化してきました。

 

これらは時代や指導要領が変わろうとも、コミュニケーション力を高めていくための方策として普遍的な指導技術、指導アイディアとして英語指導の場において活用いただける映像です。

ぜひ、ご覧いただき授業の中に取り込んでみてはいかがでしょうか。