大学入試改革を考える


2020年度から始まる大学入学共通テストで導入予定だった英語外部試験活用が延期となりました。受験機会の公平性を問われた萩生田文部科学相の「身の丈に合わせて頑張ってもらえれば」という発言が教育格差を容認しているとして一気に批判が強まり、実施まで半年を切った段階で異例の方針転換。あらためて新たな制度を検討し、2024年度からの実施を目指すことになりました。

 急速に進むグローバル社会に対応できる人材を育てるために、英語教育においては「読む・聞く・書く・話す」の4技能をバランスよく育成する必要がある、ということについては大多数が賛成の立場のようです。

 

しかし、そのために大学入試も四技能型入試として、更に外部試験を活用することに関しては、制度上の問題点や不備などを理由に見直しを求める声が各方面から多く出ていました。

これまでの大学入試センター試験では「読む・聞く」の2技能が中心で4技能を測る試験への転換は難しい、では民間試験を活用しよう、という流れで、英検やTOEFL、GTECなど7種類の試験を認定(当初は8種類だったが、TOEICの実施団体は参加を辞退)。この異なる民間試験の成績をCEFR(外国語の学習・評価のためのヨーロッパ言語共通参照枠)という評価基準に当てはめて標準化し、大学入試センターで集約、各大学へ提供される予定でした。

 

全国高等学校長協会や全国大学高専教職員組合からも制度の見直しを求める要望書や声明が出され、共通テストを「利用したい」と答えた大学も7割にとどまっていた、そんな現状の中での延期発表は、現場の大きな混乱を招くと同時に、ひとまずの安堵を覚えた方々も多くいたのではないでしょうか。

 

既に学校現場、何よりも主役であるべき高校生、受験生たちがこの「入試改革」に振り回されており、とりあえず延期・再検討という結論には至ったものの先行きは不透明のままです。

 

大規模な改革が先送りになった今こそ「大学入試改革」を本気で見直す、議論を深めるタイミングと言えるでしょう。


そこで、ここでは「大学入試」について語っていただいた対談やインタビューをご紹介します。

 

具体的に何が変わるのか、どんな問題点があるのか。現時点ではまだまだ不確定要素が多すぎて、今後の動向を様子見されている先生方も多いかと思われますが、様々な意見や考えに触れて、あらためて今後の英語教育について考えるきっかけになればと思います。

 (2019.11)


四技能型英語外部試験導入延期について

 

内田 浩樹(うちだ ひろき)

 

国際教養大学大学院 英語教育実践領域 教授

 

 2019年11月初め、大学入試英語の外部試験活用延期のニュースが発表された直後に、「外部試験活用が延期されたことについて」「4技能を測定する大学入試を導入することについて」内田浩樹先生(国際教養大学大学院)にインタビュー。大学入試における経済格差、「試験で高得点を取るための勉強=アウトプット能力の育成」という観点の必要性など、率直に語っていただきました。 

 

 内田:大学入試における経済格差は、外部試験の有無に関わらず存在します。私学をいくつも受験するのには…


大学入試改革のこれから ~金谷憲の対談シリーズ~

 

金谷 憲(かなたに けん)

 

東京学芸大学 名誉教授

 

ジャパンライムの英語教員向けオンライン研修「JLCオンデマンド」にて好評配信中の『金谷憲の対談シリーズ』。毎回、金谷先生がゲストをお迎えして英語教育界の様々なテーマについてじっくり語る人気シリーズの中から『大学入試改革のこれから』を取り上げた回を抜粋でご紹介。

東京外国語大学の根岸雅史先生とともに、大学入試の何が変わり、それによってどんなことが起こるのかなどを数回に分けてお話しいただいています。

※指導者・協力者等の所属は記事掲載時点のものです。