「阿野先生、太田先生とアクティブラーニング」第9-10回セミナーレポート


■セミナー講師

 阿野 幸一 文教大学 国際学部 国際理解学科 教授 

 太田 洋  東京家政大学 人文学部 英語コミュニケーション学科 教授


「今、改めて英語科教育法を学び直そう!」という基本コンセプトのもと、阿野幸一先生と太田洋先生のコラボレーションで始まった全10回の連続セミナー

現職英語教師のための英語科教育法セミナー

阿野先生、太田先生とアクティブラーニング

 

大修館書店から発売されているお二人の共著である『日々の英語授業にひと工夫』をテキストにして、毎回のテーマについてお二人がリレー形式で交互につなぎ、内容も一方通行的にお話しするのではなくペアやグループで問題意識の共有や様々な活動をしながら学びを深めていく、という新しいパターンのセミナーです。

自主学習への導き

第9回目は、太田洋先生のご担当による「自主学習への導き」。

開催日は2020年2月22日、世間では新型コロナウィルス感染症の拡大が少しずつ広がってきている状況で若干危ぶまれながらの開催でしたが、太田先生最後のご登壇ということもあり、いつも通りの参加者のもと行われました。

 

内容は宿題の出し方、辞書指導、多読指導、ラジオ講座の活用など…というようにテーマは多岐にわたりました。

まず「宿題の出し方」では、よく出される宿題ベスト3「教科書本文を写す」「日本語訳をする」「教科書の音読をしてくる」に、それぞれの工夫、どういった共通項があるかというやり取りから始まり、参加した皆さん方が出される効果的な宿題はどのようなものか…という話では活発な意見交換が行われました。

続いて「辞書指導」では、辞書はいつどのように使ったか、また使わせなかったかということで議論を進め、太田先生が「既習表現を使って言い換える(表現する)ためのポイント」としての活用例を紹介してくださったのが印象的でした。

また「多読指導」においては、特に中学校では他社の教科書や旧版の活用や、高校では見本をうまく使おうというお話、また多読マラソンなどについて使える教材などを例にしながら紹介していただきました。

最後に太田先生ご自身は「同じ本を何度も読むことの大切さ」を強調されましたが、その心は「発見―忘れていた!」が必ずある、ということであり、今見つけることで新しいアイディアにつながるのだということを締めくくりの言葉として今回のセミナーの幕は閉じました。

 

教師の資質向上

そして3月28日最終回は残念ながら新型コロナの影響をもろに受け、6月6日に延期を早々に決定、しかしながら状況は好転せずどのようにしていくか議論を繰り返し、両先生にもご協力いただきながら、第10回はZoomを活用してのオンライン方式のセミナーという形で行うこととなりました。

初めてのオンラインでのセミナーということもあり、参加される方々はどうか心配ではありましたが、4月以降どの地域・学校でもオンラインでの授業ややりとりが常態化してきて、懸念したよりも皆さん方それぞれの状況下でオンラインを活用されている印象を持ちました。また、参加された方達も今までの対面式では考えられないほど遠隔地よりお申込みいただき、ある意味では可能性が拡がってきた感じも受けました。

 

そういう中で第10回は阿野先生の主導で、また太田先生も参加していただき盛り上がった形で進められました。最終回のテーマは「教師の資質向上」ということで教師用指導書の使い方、指導力アップのための研修、小中高の連携、そして総括として本講座(本テキスト)を指導に活かすため…という内容で行われました。

まず「教師用指導書の使い方」においては、どのくらい、どのように使っているか…という点で共有を始めましたが、重要なのは先生自身の指導の幅を広げるために有効に活用していくということが共有されました。

次は「指導力アップのための研修」。どのような研修をする(受ける)ことで指導力アップにつながるかという点では、ご自身の授業を録画し振り返ることの重要性、とにかく多くの授業を見ることなどが挙げられましたが、どうしても時間がないときには(若干手前みそにはなりますが)弊社の指導映像などを活用することの意義なども挙げていただいきました。

そして今回の中での大きなテーマとして「小中高の連携」については活発な議論が行われました。
まず出たのが、この4月から教科化された小学校での英語については、このセミナーへの参加している方々に限っては、中高の先生方であっても小学校で行われている授業を見たことがある方がほとんどでした。もし授業が見られないのであれば少なくとも中学校の先生方は小学校の教科書(目次)に目を通し、どういった項目を取り上げどこまでやっているのかを把握した方が良いということ、またそれを自分の校種で活かすアイディアにつなげることが大切だということを強調されました。
また、中学校3年生から高校1年生になるときには、中学校で扱う文法事項がどういう状況で扱われているのかを知ったうえで授業を行わないと、多くの「英語嫌い」を生み出す原因となってしまう、ということなどが問題点というか課題として挙げられました。

How to teach-教え方でつなぐことはますます重要になります。

どのように教え、どのように学んできたのか、目的、場面、状況の中で生徒がどう英語を使うかを考える授業づくりが求められてくるということ。
そして阿野先生は最後にCAN-DOを生かして「何がどのようにできるようになっているか」それを受けて「何をどのくらいできるようになることを目指して指導するのかということをつないでいくことが重要だ、ということを力説されました。


最後に、この一年間のセミナーを振り返りながらいろいろな意見が出されましたが、このセミナーに参加した翌週の月曜日には「新鮮な気持ちで自信をもって生徒の前に立つことが出来た」という参加者の感想をうかがえて、主催者としてこのセミナーをやりきれて良かったと思えました。


最終回はオンラインという形式での開催になりましたが、Zoomの「ブレイクアウトルーム機能」を活用することでグループワークなども活発に行うことが出来てほっとした次第です。また、機会を見て多くの英語教育関係者の方々の研修にお役立ていただけるプログラムをご提供していくことができればと考えています。


阿野先生、太田先生のお二人はもちろんのこと、お忙しい中参加していただいた先生方には大変お世話になりました。本当に最後になりましたが、皆さまのご健康、ご活躍をお祈りしてレポートの結びとお礼に代えさせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。


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※指導者・協力者等の所属は記事掲載時点のものです。