激務を乗り越え、つかの間の休息となる長期休暇。日頃、やりたいこと、やらねばならないこと、たくさん抱えてらっしゃると思います。日々の忙しさに追われ、なんとなくやり過ごしてしまったことを振り返るのにも、この休暇はぴったりです。
この機会に様々なことをスッキリ整理して、休み明けには気持ちよくスタートしたいですよね。
今回は、そんな先生方のヒントになるようなコンテンツをご紹介します。
皆さんは春休みや夏休みなど長期休みをどのように活用していますか?
神奈川県立の高校で38年間にわたり英語を教えてきた萩原先生が、それほど英語が得意ではない生徒たちを相手に試行錯誤してきた高校教員時代の様々な実践、視点を余すことなく語ってくださっているJLCオンライン研修コンテンツ『中高連携を意識した英語授業づくり』の中から、
「長期休みを利用しての授業準備10か条」を、抜粋でご紹介します。
ここでは例として「新たに高校一年生を受け持つ際に、春休みにこんな準備をしておくといい」という視点でお話していますが、別の学年に置き換えることも、もちろん夏休みや冬休みを区切りとして考え、それまでやってきた授業を元に軌道修正して新たに準備する際にも応用できます。
これをやっておくことによって、日頃の教材研究の時間を短縮して楽にできるようになります。
「長期休みを利用しての授業準備10か条」
1. 昨年度の生徒にとったアンケート分析
2. プレイスメント(到達度)テストの作成と分析
3. Can-doリストから3年間の授業デザインを作る《第1学年》
4. 中学校の教科書を研究する
5. 4月から使用する教科書を通読する
6. 使用教科書の出典に目を通す
7.「年間授業計画表」に落とし込む
8. 教科担当者の了解を得る
9. ポイントをしぼって、表計算ソフトに入力する
10. 毎課で使用するハンドアウトを作成しておく
ここでは、上記の授業準備10ヶ条の中から、具体例として下記の2ヶ条をちょっとご紹介!
2. プレイスメント(到達度)テストの作成と分析
9. ポイントをしぼって、表計算ソフトに入力する(簡易データベース作成)
何事もそうですが、ごく限られた時間の中で、効率的・効果的な授業をするためには、その下準備が大事!
それがよくわかる10ヶ条!参考にしてみてください!
![](https://image.jimcdn.com/app/cms/image/transf/dimension=118x1024:format=png/path/sbc87da0e57ffa2ec/image/i20404a423f1fc709/version/1577173475/image.png)
萩原 一郎(はぎわら いちろう)
都留文科大学 英文学科 特任教授、神奈川大学 英語英文学科 非常勤講師、新英語教育研究会 全国常任委員、ELEC同友会英語教育学会 運営委員
現時点で、何がどこまで、出来ているのか、いないのか?
2.プレイスメント(到達度)テストの作成と分析
基礎クラスと発展クラスといった習熟度別のクラスに分けるために、4月の最初の授業でプレイスメントテストをやっていたのですが、そのテストの設問自体を文法、読解、ライティング等、色々な項目に分けて作り、それぞれの到達度を調べることも兼ねて実施しました。
![](https://image.jimcdn.com/app/cms/image/transf/dimension=335x1024:format=jpg/path/sbc87da0e57ffa2ec/image/i2888f1952e99cc70/version/1577327203/image.jpg)
これは高校1年生の4月の時点での文法項目のテストです。
「Where are my dogs? I can't find.」findのあとに選択肢が4つあるのですが、themを選ばせる複数形の代名詞の問題ですね。
この正答率が52%。
次は日本語に対して穴埋めをさせる問題。
「Does your father like cooking?」中学1年生の範囲ですが、この基本的な疑問文、質問文の作り方が37%。
次はrunという動詞の不規則動詞の穴埋め、これが46%。
このようにそれぞれの通過率をだしておくと、このぐらいのレベルの生徒たちをこれから教える、では、授業の中でどういうフォローをしていけばよいかという次への基準づくり、授業づくりになります。
ただ点数だけを見るのではなくて、現時点でどういうことが出来ているのか、出来ていないのか。
ちょっと手間はかかりますが、習熟度別クラス編成を行っている、いないにかかわらず、先生方のお勤めの学校でもこのように生徒の英語力を測ることは、是非試していただければと良いかと思います。
更に、こうしたプレイスメントテストを積み上げていき、1年後にもう一度同じテストをやってみて前回と比べ、どれくらい通過率が上がっていっているのかの分析も出来るといいですね。
簡単!授業のためのデータベース作成!
9. ポイントをしぼって、表計算ソフトに入力する
フォニックスの例を挙げますと、高校生は意外と「au」を「オー」と発音できないんですね。
そこで、事前に「au」という文字がどういう風に出てくるかを調べておきます。
例えば「laundry」はカタカナ英語の影響で「ランドリー」と読みがちなんですが、過去に教科書の中に出てきた「sauce」とか「because」という単語からlaundryに引っ張ってあげると、こういう風につながってるなという事を生徒に示すことができます。
こういう指導をするには、目的の文字がどういう風に教科書の中に出ているかを自分の中で整理しておく必要がありますが、その際に私が重宝した方法をお教えします。
◆教科書付属のCD-ROMを入手し、教科書全体のテキストファイルをひとつにまとめて活用
まず教科書付属のCD-ROMを入手し、その中に入っている本文のテキストデータを活用します。
Lesson1の本文の最後にLesson2のテキストファイルをカットアンドペーストして繋げ、その後にLesson3を続けてカットアンドペーストして、教科書全体を1つのテキストファイルにします。
そうすると仮に、教科書1冊で3800語のテキストファイルが出来上がります。
これを使って、「au」という文字を検索してみます。
するとauが含まれている単語がバーッと色が変わったり、波線が引かれたりしますね。
これを先ほどのフォニックス指導に活用します。
教科書で取り上げている文法事項にも使えます。
例えば、過去完了形を繰り返して取り上げ定着させたいと思ったら、過去完了形が教科書のLesson1からLesson10まででそれぞれ何回出てくるかを通読をして調べておく必要がありますが、これも先ほどのテキストファイルで「had」を検索してみます。
勿論、過去完了ではない単なる過去形のhadも出てくるのですが、過去完了形はhad+過去分詞なので過去完了形がどういうふうに分布しているかというのが短時間で見れます。
また、時には特殊な文法事項を扱うこともあると思います。その後、その文法事項が教科書の中で出会う機会が少ないなと思ったら意識的にどこかの例文で取り上げたり、先生方のティーチャートークの中にいれてあげたり、という配慮も必要です。
そういったことを意識するにも、これは私のおすすめの方法です。
…以上、二つを取り上げて紹介しましたが、他にも、あれもこれもご紹介したいものばかりの「授業準備10ヶ条」!
・自分が出来たこと、出来なかったことを振り返る!
・やりたいこと、思いついたことを、とにかく細かく書き出しておく!
・テレビ番組が出典?ビジュアル要素も大いに使える!
・年間授業計画の縦軸と横軸でイメージを掴もう! …and more!
これらは英語教諭向けオンライン研修「JLCオンデマンド英語コース」にて配信中!
是非ご覧いただき、先生方ご自身でも自分なりの10ヶ条を作って実践してみてください!
JLCオンライン研修「中高連携を意識した英語授業づくり」はこちら▼▼▼
※指導者・協力者等の所属は記事掲載時点のものです。