横浜市における英語教育に関する取り組み ⑴

小学校が変わる今、中学校にも変化が求められている

2020年度から小学校英語の教科化が実施されます。

外国語活動が3・4年生からに行われるようになり、教科となる5・6年生では配当時間も倍に増え、これまで以上に子どもたちが英語に慣れ親しむ時間が増えることとなります。

これまでの小学校における「外国語活動」は教科ではないため、学校や地域によって活動内容や学習方法に大きな幅がありましたが、「教科」になると当然、指導現場や教師に求められることも変わります。それは小学校だけでなく、次に繋がる中学校でも同じです。

各自治体、各校で、教科化に向けて様々な取り組みをされていることと思いますが、この大きな変化に戸惑いや不安の声もよく聞かれます。

 

今回は、小学校英語」に対して先進的な取り組みを続け、2019年度の全国学力調査においても全国第2位という成果を出している神奈川県横浜市の事例を、横浜市教育委員会の西村秀之先生にインタビュー形式で詳しくお伺いしました。

(2019.9)


西村 秀之(にしむら ひでゆき)

 

横浜市教育委員会 教育課程推進室

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小学校英語の教科化により、小学校と中学校それぞれの指導現場や教師に求められることは、どのように変わると思われますか?

移行期間中にも取り組んできましたが、これまでの「聞くこと」「話すこと」に加え、「読むこと」「書くこと」が新たに指導事項となります。

新しく教科となる小学校5・6年生では、3観点によるABCによる評価、それらを踏まえた総括的な3段階の評定がつくことになります。

 

そして、小学校で培ってきたことを中学校でいかに踏まえた上で授業を展開していくか、というところが大事になってくると思うので、中学校こそ変わらないと今回の改定の意味がなかなか見いだせないのではないでしょうか。

 

移行措置等の関係で、今後6年間にわたり、毎年入学してくる中1の生徒が小学校段階で受けてくる外国語活動及び教科外国語科の総授業時数が異なる、ということが起こります。毎年、生徒の実態に合わせた授業改善が必要になります。

 

仮に10時間だとしても受けている経験時間数は違ってきて、その都度、その子供たちに応じた授業というものを提供していかねばならないので、中学校こそ本当に今回変わらなくてはいけないんじゃないかなと感じています。

 

そうした状況を中学校の先生は現在どの程度認識しているのでしょうか。例えば、小学校の教材を見たりしているのでしょうか?

中学校は新学習指導要領自体が再来年からの実施なので、まだちょっと熱が入っていないところもあるとは思いますが、文部科学省から小学校の教材一式が全て学校に配布されていますので、手に取られて見られている先生もいらっしゃるんじゃないかなとは思います。

また、横浜では、これまで横浜で長らく使っている独自教材をすべてオンライン(イントラネット)上で提供していますので、いつでも目に触れることはできるのですが、なかなか全部の先生がそこまで見ている、という状況にはありません。

 

ですから、私たちが中学校の研究会等に行った時に情報提供として、中学校がどうこうというよりは小学校の情報を流す事の方が今は多いです。その情報を先生方に提供することで、それを踏まえた上で各学校が状況に応じて改善に繋げていってもらえればと思っています。

 

小学校から外国語活動を行ってきた子どもたちが実際に中学生になってきましたが、中学校の先生方はどのように受け止めていらっしゃるのでしょうか?

横浜は長らく「小中ブロック」という形で、中学校を主体とした校区の小学校との連携を進めていますが、その中でも大きな取り組みとして外国語活動があります。

小学校でそうした活動をすることで子どもたちの態度面、また聞くことや話すことが以前とは比較が出来ないくらい良くなって来ている、というのが概ねの意見です。

 

しかし、その校区の中にいくつかある小学校全部がみんな同じかというと、学校によっての温度差はある、というのが正直なところです。ただ、これから小学校英語が教科化されるにあたって、特に5・6年生は教科書が主体となった授業展開になっていきますので、子どもたちの学んできていることがある程度同じになっていくとは思うので、これまで以上に小中連携を図りやすくなるんじゃないかなとは捉えています。

 

そうした中で、授業自体は何を変えなくてはいけなくなるのでしょうか?

これまで以上に、その単元を通じて児童生徒にどのような資質・能力を身に付けさせたいかということを踏まえた授業づくりが必要になってきます。

その1時間をどうするかということではなくて、小学校であれば3時間ないし4時間で考えたり、中学校であれば8時間、9時間、10時間といった時間の中で、その単元を通じてどういった力・資質・能力を子供たちに育んでいきたいかというところを踏まえた授業づくりというのがより求められていくのではないかなと思っています。

 

そうしたことを念頭に英語教育、授業等の目標を踏まえ、AETとのティームティーチングの充実や、また、小学校では担任の先生による単独の授業を推進していくことになります。

 

先生に対する研修は、どのようなことを変えなくてはいけなくなるのでしょうか?

小・中学校の先生に対して求められることが大きく、多くなり、ますます授業改善が求められてきているので、より一層研修の充実を図っていかなくてはなりません。

 

しかし、昨今の学校の状況や、働き方改革の視点から、横浜市においても今まで先生方に来ていただいて受けていた集合研修の回数を少し削減していこうという流れになっているのが現状です。

そこで、これまでの集合研修という形態を変え、学校への訪問研修や、先生方が学校現場にいながら研修が積めるように、オンラインによる情報提供・研修システムの構築というものを導入、実施しています。

 


 横浜市の英語オンライン研修は、ジャパンライム株式会社の動画配信サービス(JLC OnDemand)を使用しています。


 

小学校、中学校それぞれにおける具体的な取り組みについてのインタビューはこちら▼▼▼

※指導者・協力者等の所属は記事掲載時点のものです。