Skypeを活用したグローバル教育の実践


 

グローバル化が急速に進展する中、海外との繋がりが少ない生徒達と世界の様々な国々を繋ぐ授業実践を取り上げたDVD「Skypeを活用したグローバル教育の実践」の中から、その取り組みについてうかがった米原高校の堀尾美央先生へのインタビューを抜粋でご紹介します。

 

Skypeを活用して、これまでに25カ国以上の国々と交流を行い、多様な価値観・文化風習に触れるだけでなく各国の生徒とディスカッションを通じて相互理解を深めるといった取り組みが評価され、教育界のノーベル賞とも言われる「グローバル・ティーチャー賞」トップ50に選出された堀尾先生。

現在もICTを活用して地方の公立校でもできる世界との繋がり方を模索されている堀尾美央先生によるSkype授業は、まさに今求められている「英語を使って何をするか」を示した優れた実践例の一つと言えるでしょう!

 

Skypeで世界とつながり、英語が通じる楽しさを体験

  • 堀尾 美央(滋賀県立米原高等学校 教諭)

 

Skypeを導入されたきっかけと、この授業の狙いについてお聞かせください。

最初にこの取り組みを思いついたのは前任校に勤務していた時です。勤務地である滋賀県の湖北地方は海外との交流や外国人との交流が少ない地域です。そこで少しでも生徒に海外との接点を持たせるために思いついたのがSkypeによる交流です。

 

この授業のねらいは、まず、英語を使ってコミュニケーションをとるということです。

英語と言ってもネイティブの英語ではなく、世界中で英語を外国語として話している人たちと英語でコミュニケーションをとるというのが一番の目的です。

 

その方法として「Mystery Skype」という方法をとっています。

これは相手にYes/Noで答えられる質問をし、相手の国がどこか、相手がどこにいるのかをあてるゲームを兼ねた交流学習です。生徒達はこの取り組みをすることによって、英語だけでなく世界の地理や文化についての知識を深めることができます。 

 

Skype交流の魅力や用いるタイミング、その活動例を教えてください。

この交流ではさまざまな国と交流することができます。私も東南アジアのマレーシアやベトナムをはじめ、ヨーロッパ諸国やアフリカ、今回のDVD(『Skypeを活用したグローバル教育の実践』)に収録されたような南アメリカ諸国と交流をしてきました。

その中で生徒達を見ていて気がついたのは、私達が普段暮らしていて当たり前だと思っていたことが当たり前ではないと思える瞬間がたくさんあることです。ある国に対しての偏ったイメージであったり、固定観念でこの国はこうだと思っていたことが実際に交流をしてみたら実は違う、といったことが非常に多くあります。現地の人達の声を聞くことで生徒達も実際にその違いを感じることができます。これがSkype交流の一つの魅力だと思います。

 

先ほどお話したMystery Skype以外で、授業でSkypeでの活動を導入した具体例をお話しします。

 

まず一つは、教科書でマレーシアのボルネオ島における森林破壊の話を読んだ時の例です。

教科書の中でボルネオ島における森林破壊とパームオイルの関係性について勉強した単元があり、レッスンの巻末に「ボルネオ島の人たちはパームオイル、ヤシ油を作るのをやめるべきか」という質問がありました。クラスの生徒達のほとんどは「やめるべき」と答えたのですが、実際にその後ボルネオ島の現地の高校生と繋いで、同じテーマでディスカッションをしてみたところ、ボルネオ島の方から「それは不可能です」と返ってきました。

 

また、昨年、南アフリカの水問題についての話を読んだ時に、実際に南アフリカの先生にSkypeで接続して話を聞いたことがありました。その時は「水問題はどれだけ深刻なんですか?」と質問をしたところ、教科書の枠を超えて「動物の皮から水を汲んできたり、一日に使える水の量が決まっている」など、現地の生の声を聞くことができました。

 

今回は高校での実践を紹介していただきましたが、中学校でも導入は可能ですか?

中学校でもやり方によっては導入可能だと思います。

以前、小学生向けに地域のコミュニティセンターで活動をやらせてもらったことがあります。

生徒や子ども達が英語をなかなかしゃべることが出来ないので、この時はMystery Skypeの方法だけを先に伝えておいて、どういう質問がしたいのかを子どもから先生に伝え、先生が英語で質問をする、というような取り組みでした。

最初はなかなか出来なかったのですが2回目、3回目になってくると子ども達自身が「自分も英語で喋ってみたい」と言って、私が話した英語を真似して隣で話すようになっていました。

 

このように英語に対する学習意欲を上げるという意味でも効果的だと思います。

 

堀尾先生が2018年に受賞された「グローバル・ティーチャー賞」についてもお聞かせください。

 

グローバル・ティーチャー賞はイギリスのバーキー財団という教育団体が主催している賞です。毎年12月にその年の最終候補者50名が全世界から発表されます。その次にその50名の中から最終候補10名が選ばれ、3月にドバイで行われる教育フォーラムで最終的な最優秀候補が選ばれます。

私は昨年2018年のグローバル・ティーチャー賞の最終候補50人に選ばれました。

評価されたのはSkypeを使うということよりも、なぜSkypeを使っているのか、このように地方に住んでいてなかなか海外の人たちと交流をする機会がない子ども達に少しでも交流の機会を与えられないかと思い取り組んだことが評価されたようです。

 

Skype授業の導入を考えておられる先生方へのメッセージをいただけますか。

 

私も最初にSkypeを思いついた時、本当に上手くいくのか、生徒が楽しんでくれるのかがとても不安でした。しかし初めてやった時に普段の英語の授業で下を向いている生徒達が一斉に顔を上げ、盛り上がって英語を話して楽しんでいる様子を見て、英語教員としてものすごく嬉しかったのを覚えています。その時に私自身も、これが英語を学ぶ意味なんだと改めて認識したのを覚えています。

そこで生徒達にも、なぜ英語を学ぶのか、英語を学び英語で交流することでさまざまな可能性が広がることを伝えていきたいと思い今も続けています。

もし、同じように思っている先生がいらっしゃいましたら是非一度やって頂き、その時の生徒の雰囲気を是非、ご覧になってください。


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