ELPA(エルパ)英語教育フォーラム2019 『ギャップを埋める』レポート


2019年8月21日に開催されたNPO法人ELPA(英語運用能力評価協会)主催のフォーラムの模様をご紹介します。

 

今回のテーマは、中学高校の英語教育においてネックとなる「中高のギャップ」についてです。

中学校から高校にかけては教材の難易度や分量が大きく変化しますが、土台となる中学校での英語が十分身についていないところへ、土台より重い高校英語を載せようとしてうまくいかない事例が多く見受けられます。そこで、中高のギャップの現実を把握したうえで解決のための実践例を紹介して、情報交換・意見交換をしつつ、より良い解決策を模索していく、という実践的な内容のセミナーでした。

中高ギャップの実態と、解決のための実践例

まず最初にELPA理事長でもある金谷憲先生(東京学芸大学名誉教授)から全体のイントロで中高ギャップの現状についてのお話があり、そのためのギャップ対策(定着のための工夫)として、コアラ(Core Learning)不動BridgeTANABU Model山形スピークアウトKitaCOM三本木メソッドなどの事例をご紹介いただきました。

 

次に根岸雅史先生(東京外国語大学大学院教授)に『中高ギャップの実態』というテーマで講演いただきました。

インプットとしての教科書を取り上げ、「日本人英語学習者は、英語の教科書が読めているのか」という問題提起がなされました。また、英語の教科書レベルと学習者のレベルの関係をLexile Measureで調べると、中学校3年から高校1年の間には大きなギャップが存在することが明らかであるということを強調されていました。

生徒のレベルにあったテキストを大量に読ませることで読みの能力を高める取り組みについても紹介され、学校での教材選択に様々な課題が山積していることも明らかになりました。

 

続いて実践面の紹介に移り、SN5と呼ぶ埼玉県北部5校英語研究会の野澤先生(埼玉県立熊谷高等学校)より、コアラ(Core Learningの略称)の取り組みについてのお話がありました。

『コアラCore Learning)』とは、中学英語復習発展のための特別授業(年15回程度)を行う取り組み、中学校既習事項の定着を図るため平易な教材を用いて生徒に高い負荷をかけた活動、生徒の頭に確実に中学英語を残し英語の自動化を図ろうというものです。

具体的な活動としては、「Strip Story」という5人一組のグループで行う協同学習でパラグラフをばらして元通りにする活動がひとつ。もうひとつは、シャドウイングとディクテーションを組み合わせた「Loud Speaker」です。一人の生徒が前に出てヘッドセットをつけて拡声器のように英文をシャドウイングし、他生徒はディクテーションする…という活動です。

これらの活動を反復することで発話量も上がり、コミュニケーション英語Ⅰの授業にもプラスの影響が働き、英語基礎力定着の役立てにも繋がっているといいます。

 

続いて、埼玉県立不動岡高等学校の『不動Bridge』と呼ばれる実践の取り組みが紹介されました。

この取り組みは、普通科も外国語科も合わせた新1年生全員が、入学から1学期の中間テストまでの約4週間、高校の検定教科書は一切用いず中学英語と高校英語を接続するための活動ベースの授業を行う、というものです。実際に授業を受けた1年生たちの意見も概ね好評で、コミュニケーション英語Ⅰや英語表現Ⅰの授業の中で活かせる実力が身についたと答えているそうです。

 

 

以上のように、中高のギャップにおける現状を整理したうえで、試行錯誤しながらそのギャップを埋めていくべく様々な実践(活動)が紹介され、今後のより良い解決を目指して様々な議論が活発に行われたセミナーでした。


このセミナーの模様は、弊社のオンデマンド英語コースにて配信中です。是非ご覧ください!


このセミナーで紹介された活動例の一部は弊社DVDでもご紹介しております。下記リンク先よりサンプルムービーもご覧いただけますので、ぜひご覧ください! ▼▼▼

「コアラCore Learning)」で行なっている活動内容について

「Strip story」と「Loud Speaker」は、時代が変わっても変わらず取り入れられている優れた活動例です。具体的な活動内容の動画をご覧になりたい方はこちら▼▼▼

 

※この映像は、1989年,1991年に制作されたDVDの一部映像になります。発売当時の画質であることを予めご了承ください。

▼ Strip story

▼ Loud Speaker