Small Talkが苦手?

JLCオンデマンド英語コースで好評配信中『金谷憲の対談シリーズ』より、Small Talkの現状について語っていただいた回を抜粋でご紹介します。


最近、小学校ではSmall Talkを使った活動が盛んに行われているといいますが、長らくこの活動をやってきている筈の中高の教育現場で、授業のSmall Talkを苦手としている教師が増えていると聞きます。それには、話題が思いつかない、生徒とのやり取りが続かない、自分の答えられない話に変わるのが怖い、などのいくつかの理由があるようです。

 

弊社でも、これまで、田尻悟郎先生田口徹先生畑中豊先生など、数多くの先生方のSmall Talkをご紹介してきましたが、Small Talkとは、そんなに構えて取り組まねばならない活動なのでしょうか?

東京学芸大学名誉教授の金谷憲先生と東京家政大学教授の太田洋先生に、お二人の経験則を交えて語っていただきました。


金谷 憲(かなたに けん)

東京大学大学院人文科学研究科修士課程、教育学研究科博士課程および米国スタンフォード大学博士課程を経て、長年東京学芸大学で勤められた。 現在は、フリーの英語教育コンサルタントとして、学校、都道府県その他の機関に対してサポートを行う。

 

 

 ゲスト:太田 (東京家政大学)


Small Talkが重荷になる理由とは?

金谷:今日のテーマはSmall Talk。Small Talkをなぜ話題にしたかというと、中学でも高校でもSmall Talkが重荷になっているという先生がいまして。何が重荷になるのかが、やっとわかってきた状況です。そこで、今日はSmall Talkの名人である太田洋先生に色々お話を伺いたいと思います。

 

金谷:重荷になっている、と言う先生たちは、まず何を話していいかわからないと。small talkのテーマをどう決めるかがよくわからないとおっしゃるんですが、Small Talkでテーマはいらないだろう、と私は思ってしまう。
先生たちは、それを決めないと英語でどういう表現していいかわからない(準備ができない)ので、それをまず決めたい。で、テーマ設定をまずして、それから英語でどう言おうかと考えて準備してから教室に入っていかないと心配だ、と。

 

太田:ちょっとしたおしゃべりをすればいいのになぁ、というのは感じますね。Small Talkは単なる雑談なのに。

しかしこれが本当のコミュニケーションです。日本語に直しても別段おかしくなく、例えば担任の先生が朝入ってきて

「おぉ眠そうだな、どう?」とか「遅かったの?」

「どう、やってきた?宿題。…やってないんだ、再提出だよ」

「昨日テレビ見たか?」

こういうおしゃべりがたまたま英語だった。これが私にとってのSmall Talkです。
「SMALL TALK」という型があって、この時間に何分Small Talkをやらなきゃいけないみたいに思うと、多分私もつらいです。
私がよく言っているのは、やりたい時にやればいいんじゃないですか、ということ。話したいことがある時に話せばいいじゃないですか。

 

金谷:テーマを決めにくいと言われたときに、本当にびっくりした。雑談でテーマ決めるわけないでしょう。Small Talkと言うからややこしい。

太田:そうですね。

金谷:教室にガラガラっと入っていって、その時思いついたことを話す、という感じですが、やっぱりテーマを決めないと教室に行けないという人もいる。日本語なら大丈夫だが英語になると…。
日本語であれば「昨日遅くまでサッカー見てたでしょう」「先生も見てたんだ」という会話が普通に成り立つけれども、これが英語になると最初のやり取り1往復くらいは想定はしていてもその後の展開が難しい。このような傾向はあると思います。
テーマ設定が苦しいという人と、テーマはOKだけどそれを英語でやるのがつらいという人がいると思う。

太田:他の教科で雑談をすると、それは授業に関係ないじゃないか、時間をちゃんと使いなさい、このように先生自身が思ってしまうのではないか。ひょっとすると英語のSmall Talkも、Small Talkにはこういう効果があるからこうしなきゃいけないとか、堅苦しく考えているのではないでしょうか。

 

Small Talkのテーマ(話題)はどうすればいい?

金谷:テーマというほど大袈裟ではなく、話の内容としては、例えばテニスのウインブルドン選手権の放映があれば「自分は途中で寝ちゃったけど生徒にテニスが好きな奴がいるな」と、教室に入るまでの廊下で考えながら歩いていき、

「昨日テレビ見た?」「先生途中で寝た」

「だけど最後まで見た人いる?」「あぁ、いるんだ」

「今から寝ちゃだめよ」と。

そういう展開で十分です。

太田:テーマは浮かんだ時にそれをやればそれでよくて、普段からそう思って過ごしているとそこら中に転がっている

例えば、マクドナルドで新しいセットメニューが発売されていてAセット、Bセットとかある。これをスマホで撮影しておけば多分small talkで使えるという発想になる。
「Which do you like better? A set?」

「Set A?  Set B?」

「Do you want to go to McDonald's ?」

このような展開です。

 

まずは「生徒の生活に興味を持つ」ことから?

金谷:苦手な先生は、生徒の生活にそれほど興味がないのかもしれない。彼らがどんな生活して、どんなものが流行っていて、どんな食べ物を食べるのかとか、近所の何屋さんの何がおいしいとかいうような。


夏の暑い時期に、2つの違う中学校の授業を見せてもらった時に、両方ともアイスネタになったんです。
「暑いね、こういう時はどうする?」

「アイスを食べる」「そうだよね」と。
その時、A校とB校を比べるとA校のほうは全然乗らない。

B校では5分くらい白熱討議になった。なぜ白熱したかというと、商品名ですけど「ガリガリ君」というアイスキャンディーを話題にあげて「ガリガリ君の何味が好き?」と先生が生徒たちにふったんです。
先生は何味絶対だと思う」、と。そうしたら「えー、先生そんなのが好きなの」
「じゃあ、君は何なの?」「僕は何味に決まってるでしょ」とかっていうと隣の子が「えー」ってなことになってワーワーワーワー。で、そのうちある子が「僕は何味が好きだ、だけどお母さんは違う味を買ってきた」と言う。

太田:すごい!

金谷:すごくシンプルな英語ですけど「A味を買ってきた」と。「だけど私はB味が好きだ」ってそれだけ言って、もうどーっとウケて。先生が「要するにお母さんはあなたの好きじゃないやつを買ってきちゃったのね」とまとめて、5分くらいもった。
もう一方のA校のほうは、生徒が「ガリガリ君を食べる」と答えたら「あぁ、そう」「君はなぁに?」と次々行っちゃって。で、そのうち「ハーゲンダッツ」が出てきたりしても「あぁ、そう」って。

太田:ルーティーンにしちゃってるんですね。

金谷:「えー、そうなんだ。いつもハーゲンダッツなの?」「いやいや、たまにですよ」とか、そういうやり取りをする気はなくて、はい次、はい次という状況になっている。
結局、このsmall talkで盛り上がるというのは、small topicの深掘り

何味が好きだ、僕も前のは好きだった、でも去年と味が変わっている、こういう展開です。
つい最近も「夏休みどこへ行くの?」これは教科書のネタなんですが。
「僕はここ行く」「あそこへ行く」「おばあちゃんの家へ行く」。

この流れで、一人の生徒が「温泉に行きます」と英語で答えたんです。
「あぁ、そう。で、君は?」と。こうなっちゃった。
温泉まで出てきたら「どこの温泉?」と普通は聞きたくなるでしょう。「箱根?」と聞いたら「いいえ、湯布院」「え!それ家族みんなで行くの?」「すごい高いでしょう」と。他愛無いけれども楽しい会話になる。そこで「はい、それじゃあ次は」となると、面白くもなんともない。


勉強は勉強なんだけれども、使いながら楽しんでいって、親しんで身についていくというような授業。堅い言葉でいうと授業観みたいなもの。これが根底にあるような気がします。


今回は、「なぜ、small talkができないのか?」についてのお話をご紹介しました。お話はまだまだ続き、どうやったらsmall talkができるようになるのか、small talkで身につく英語力とは…と広がっていきます。その内容については、また機会をあらためてご紹介したいと思います。今すぐ、この話の続きが知りたい!という方は、ジャパンライムの英語教員向けオンライン研修システム『JLCオンデマンド英語コース』をご覧ください。↓↓↓

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