『学級担任が行う台東区立東泉小学校の英語授業』⑵


東京都台東区立東泉小学校の4年生、6年生の授業を収録したDVD『学級担任が行う台東区立東泉小学校の英語授業』の中から、この活動を支える台東区教育研究会小学校外国語活動部のお二方に、台東区での英語教育の取り組みについてうかがったインタビューを紹介します。


  • インタビュアー:瀧沢 広人(岐阜大学教育学部英語教育講座 准教授)

  • 回答者:小西 祐一(根岸小学校校長、台東区教育研究会小学校外国語活動部部長)

  •     大島 賢(谷中小学校副校長・台東区教育研究会小学校外国語活動部副部長)

台東区の小学校外国語活動

瀧沢:台東区の教育研究会小学校外国語活動の部長を務めておられる小西校長に、台東区の小学校外国語部の活動内容と研究主題、内容について教えていただけたらと思います。

小西:台東区教育研究会小学校外国語活動部では「伝える・伝わる・通じ合う外国語、外国語活動」という研究主題で年3回研究授業を行い、その中で「授業はどうであったか、指導計画はどうであったか」を協議して、講師の先生から指導講評をいただいております。
 

瀧沢:その研究主題は毎年変えているのですか?

 

小西:見直しは毎年行っています。以前は「ALTをどのように活用して行ったら良いか」というような主題で研究していたこともありますが、最近はよりコミュニケーションの力をつけていくかという視点での研究が行われております。

 

瀧沢:研究部はどのような組織となっているのですか?

小西:部長は私、校長が担っていますが、副部長と部員という構成になっております。低学年、中学年、高学年それぞれの文化会を組織しており、それぞれ年1回ずつ研究授業を行う活動を行っております。その年間3回の研究授業の前には、それぞれの分科会を中心に指導案の検討会を行います。その他に、全員で集まって研修会活動も行なっております。

 

瀧沢:年3回集まるだけでは、なかなか研究も推進出来ないですが、それぞれの分科会ごとに集まればより研修が深まりますね。

小西:色々な場所で研修をしている教員もいますので、情報交換や今日的な教育課題等について共有し研修を深めております。
 

瀧沢:この地域は非常に外国人も多いと思いますが、台東区における英語教育の強みとは何でしょうか?

 

小西:台東区は浅草・上野という観光地を抱えているということもあり、大勢の外国人観光客が毎日訪ずれるため、非常に外国人と触れ合う機会が多い環境にあります。また大学も多くあり、外国人留学生も多く来ております。そのような留学生と交流を持ったり、あるいは街へ出かけ観光客の方に街の紹介をしたり、そんなことを学校独自の活動として行っています。それぞれの学校で特色ある教育活動を展開しております。

瀧沢:学校によっては実際に子ども達が校外学習として外国人と話す時間も作っているのですね。初めて会う外国人に話しかける、そして話が通じた、というその自信が、英語の勉強にも繋がるのではないかなという風に思います。


小西:本当にその通りで、子ども達は語彙もまだ限られた中で一生懸命コミュニケーションをとります。そこで楽しさを十分に味わうことでより英語の勉強への意識も高まっております。

 

瀧沢:ALTは大勢いらっしゃるのですか?


小西:台東区教育委員会よりALTを派遣して頂いております。高学年を中心に外国語活動の時間には、毎時間ALTが配置されるようにご配慮いただいています。

瀧沢:各学校に一人ずつは居るという事になりますかね。

 

小西:そうですね、毎日ではありませんが、学校の規模に応じて、その時間数にALTが必ず居るように配置しています。その他にももう1名ALTが配置されていて、外国語活動の時間だけではなく色々な教科で一緒に学習に入っていただいています。また、給食を一緒に食べたり遠足に行ったりしながら、英語をなるべく身近に感じられる授業も行なっています。

瀧沢:普通はALTは英語の授業だけ出るような感じがしますが、体育の授業や理科に出たりすることもあるのですか。


小西:いろんなことをALTと一緒に勉強し、そこで英語のやり取りが出来るようにしています。

 

瀧沢:英語以外の授業に出ながら、英語ではこういうふうに言うのだと、子ども達も実感を持って言葉を学んでいけますね。


小西:そうですね、関心や意欲もそのことによって高まっています。

 

瀧沢:最後に、台東区小学校外国語活動研究部で今後どのようなことを研究して行こうかという構想がありましたら、教えていただけますか。

 

小西:外国語と関わりのある学習場面は多々あります。教科の枠を超えてどのような場面で外国語と接することがあるか、あるいは外国語教育を展開出来るかということを研究していきたいと考えています。またこれまで以上に小学校と中学校の連携が重要になってまいりますので、どのように中学校と連携していくか模索していきたいと考えております。
何と言いましても外国語あるいは外国語活動の授業をどう充実させていくかということが何よりも大切になってまいります。外国語活動部では、より良い授業を提案し、区内あるいは区内外に広めていけるように、充実した授業を目指していきたいと考えております。

「台東English Standard」とは

瀧沢:今年、3回ほど台東区に来させていただきまして、中学年、高学年、低学年と授業を見させていただいたのですが、どの先生方も非常に安定した素晴らしい授業をされているのを見て、その裏にはこの授業の指標となる「台東English Standard」があるということを知りました。

台東区教育研究会小学校外国語活動部副部長でもある大島副校長に、このイングリッシュスタンダードを作られた経緯をお聞きしたいと思います。

大島:大きく2点ございます。まず、これからの時代を生きる子どもたちに必要な資質能力の一つに、外国語、特に英語を使ってコミュニケーションする力が必要であると考えました。そのためには授業の充実が重要であると考えた点が1点目です。
2点目は、目前に迫っていた教科化に向けて、全ての担任の先生が自信をもって授業するために必要な基礎の形を提示することが重要であると考え、作成に入ることになりました。

瀧沢:完成したのが平成29年12月という事ですけれども、出来るまでにどのくらい時間がかかったのでしょうか?

大島平成29年度当初に、台東区教育研究会小学校外国語活動部長の小西校長先生の研究構想の大きな柱であるスタンダードが打ち出され作成が始まりました。5月中旬に第1項が完成しまして、部員の中でそこから推敲が始まりまして、9月第2項、11月に最終版という形で完成し、12月に台東区内外の教員に提示することが出来ました。

 

瀧沢:非常によく出来ているなと思いました。この項目も部員の中でかなり話し合ったと思いますが、このスタンダードについて教えていただけますでしょうか。

大島はい、大きく3点ございます。
1点目は、全ての担任教師が自信を持って授業を組み立てることができる基本の形を示すという視点に立って作られているということ。
2点目は、子ども達がコミュニケーションをはかる素地または基礎となる資質や能力をどのように育てるか、どのような授業を組み立てればそのような資質能力が育つか、また評価の仕方について詳しく書かれているものであるということ。
3点目に大きく二つに分けまして、授業の準備のために重要なことと、授業で重要なことというそのような内容になっております。


瀧沢:いろんなところで見かけるパンフレットにも授業についてはよく書かれていますが、授業の準備をどうするか書かれているコーナーは画期的だなと思いました。
これからは読み書きもどんどん入ってきますので、研究の推進をしていただけたらと思います。

大島はい、第2弾のスタンダードのことも視野に考えて研究活動を進めていきたいと思っております。


どんな風に授業を組み立てたらいいのか、振り返りをしたらよいのかという指針があることで、普通の先生も迷うことなく英語教育に取り組むことができ、結果的に90%以上英語を使った活気溢れる授業になっている…。

 DVD『学級担任が行う台東区立東泉小学校の英語授業』では、全ての担任の先生が自信を持って授業するための「台東English Standard」をベースとした、普通の学級担任による、ほぼオールイングリッシュの授業が紹介されています。

普通の先生による普段の授業。

きっと参考になるはずです!